珍しい知財判決集 New (2017.11.13)

珍しい知財判決集 New

New 平成29年(ワ)第24850号:平成29年10月30日判決言渡
「特許申請の真正な名義への訂正等請求事件」
同姓同名の他人が、発明者の名義を訂正し、謝罪広告を新聞に掲載するように求めた事例。TOTO 株式会社の出願において、原告と同姓同名の発明者が記載されていたために、その訂正と記載を誤ったことに対する謝罪広告の掲載を求めて提訴したというアレな事件である。当然、原告の氏名を冒用したとの事実は認められないと判示された。なお、事件名が「特許申請の真正な名義への訂正等請求事件」とあるのは、「真正」な名義と特許「申請」をかけた高度な駄洒落だと思う。


平成27年(ワ)第22491号:平成29年4月13日判決言渡
「損害賠償請求事件」
マキサカルシトール製剤を販売等する被告らに対し、特許権の均等侵害して損害賠償金を請求した事例。事例はそれとして、原告が独占的通常実施権者としての立場で損害賠償請求しているときに、特許権者から許諾を受けた独占的通常実施権者が製品を販売する場合も、特許法102条1項(損害の額の推定)及び特許法103条(過失の推定)が類推適用されると判示された。

平成28年(行ケ)第10067号:平成29年1月23日判決言渡
「審決取消請求事件」
プロダクトバイプロセスクレームであっても、発明特定事項を製造方法により特定される状態に限定して審査すれば、拒絶できることを判示した事例。補正によって製造方法を含むことになったクレームについて、審判ではPBPクレームの明確性要件違反の有無については検討・判断することなく、進歩性の有無について検討された。これについて、出願人は、明確性についての審理を尽くしていない等と手続の違法を主張したが、別の独立特許要件である進歩性の欠如を理由とする結論について、知財高裁はこれを合法であると判断した。
結論は首肯できるけど、本来製造方法に限定して審査しちゃいけないのを、製造方法に限定して審査している点で、審査手法に誤りがあると思うんですよ・・・。

平成27年(行ケ)第10230号:平成29年1月25日判決言渡
「審決取消請求事件」
無効審判請求人が冒認を裏付ける事情を具体的に指摘し且つ裏付けとなる証拠を提出する場合は、これを凌ぐ主張立証をしない限り冒認と判断されると判示された事例
冒認出願を理由とする無効審判の審決取消請求事件である。「特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は特許権者が負担するが、冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく且つその裏付けとなる証拠を提出しない場合は、主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるとされた。一方、冒認を裏付ける事情を具体的に指摘し且つその裏付けとなる証拠が提出された場合は、これを凌ぐ主張立証をしない限り主張立証責任が尽くされたと判断されないとされた。その上で、現特許権者が発明の着想を得ていたことやそれを具体化するための方法を試行していたことを示す証拠が何ら見当たらないにもかかわらず、突如としてサンプルを製作するというのは不自然であるとして、一部請求項については冒認が認められた。

平成28年(行ウ)第374号:平成28年12月21日判決言渡
「特許査定義務付け等請求事件」
特許査定をせよ、拒絶理由通知書送達は無効だ、及び拒絶査定を送達するな等を求めた事例。通常の所要期間を経過していないので、特許査定されていなくとも訴訟要件(行訴37条の3第1項第1号)を満たさないとして、「特許査定をせよ」の要求は不適法とされた。また、拒絶理由書等の送達に関する要求は、権利義務に直接具体的な影響を及ぼさないため、処分性を有さず、「処分又は裁決」(行訴36条)を対処としてないため、不適法とされた。
なお、拒絶理由通知書の作成までの期間が通常の所要期間を徒過していた、又は不当に長期であったならば、査定を求めることはできそう。

平成27年(ワ)第17928号:平成28年9月15日判決言渡
「発信者情報開示請求事件」
リツイート行為(インラインリンク)は、公衆送信権、複製権、同一性保持権及び氏名表示権を侵害しないとされた事例。本件では、氏名不詳者がアカウントのプロフィール画像として、職業写真家が撮影した写真を使用していた。このプロフィール画像設定行為、及び氏名不詳者によるツイート行為は、公衆送信権を侵害するとして発信者情報の開示が認められた。一方、このツイートに対するリツイート行為は、これによりタイムラインのURLにリンク先であるURLへのインラインリンクが自動的に設定され、同URLからユーザーの端末に直接画像ファイルのデータが送信される(写真の画像ファイルは複製されない)として、公衆送信権及び複製権等の侵害が否定された

平成27年(ワ)第13006号:平成28年3月29日判決言渡
「職務発明補償金請求事件」
特許を受ける権利を譲渡する旨の契約に「相当の対価の支払を求める権利を有していないことを確認する」旨の条項があったことを理由に、職務発明の相当対価請求権を放棄したと判断された事例。本件契約には、「両当事者は,本発明が職務発明であり,本条の対価が,本発明により甲が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて甲が貢献した程度を考慮して定められたものであり,乙は,特許法第35条3項に基づいて,本条の対価以外に,相当の対価の支払を求める権利を有していないことを確認する」との条項があり、発明者がこれに署名押印していたために、対価請求権を放棄したと判断された。
契約だと、こういうやり方も有効だと思いました。


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最高裁判決の紹介:平成28年(受)第632号 (2017.11.10)

最高裁判決の紹介:平成28年(受)第632号

特104条の3第1項の規定に基づく抗弁(無効の抗弁)に関する最高裁判決です。
なお、来年の試験範囲に含まれ、出題可能性もありますので一度は目を通しましょう。
結論としては、特許権者が事実審(控訴審)の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁(訂正により無効理由が解消される)を主張しなかった場合、その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、特段の事情がない限り紛争の解決を不当に遅延させるものとして許されない』です。

平成28年(受)第632号特許権侵害差止等請求事件』

シートカッターの特許特許第5374419号)について、上告審(最高裁)係属中に訂正審決が確定したことが、再審事由になるか否かが争われた事例。

控訴審で無効の抗弁が主張された時点では、別件審決取消訴訟が係属中であったため、特許権者は控訴審の口頭弁論終結時までに訂正審判の請求又は特許無効審判における訂正の請求ができなかった。
その後、上告審(最高裁)係属中に訂正審決が確定した。

この点、最高裁は、
①無効の抗弁が審理を不当に遅延させることを目的として主張されたものと認められるときは、裁判所はこれを却下することができる(特104条の3第2項)。これは、訴訟遅延が生ずることを防ぐためであり、訂正の再抗弁についてもこの理由は異ならない。
②特許権侵害訴訟の終局判決が確定した後に訂正審決が確定したときは、当事者は当該終局判決に対する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することができない(特104条の4)。これは、無効の抗弁に対し
て訂正の再抗弁を主張できることを前提として、特許権の侵害に係る紛争を一回的に解決することを図ったものである
③特許権者は、無効理由を解消するための訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったが、訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はない。そして、特許権者が訂正の再抗弁を主張できなかったとはいえず、その他の特段の事情はうかがわれない
④よって、事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず、訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして許されない
と判示した。

【関連記事】
「最高裁判決の紹介:平成27年(受)第1876号」

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弁理士試験-商標の再審中用権 (2017.11.07)

商標の再審中用権

商標の中用権 - 初心の者
2017/10/15 (Sun) 17:09:15
商標60の規定は、中用権(再審中用権)と解説されてますが、対応する特176はいわゆる後用権であると説明されています。
今まで、商標33は中用権の規定、商標60は後用権の規定と理解していましたが、商標法には、特許法でいう後用権というものは規定されていないのでしょうか?
少し混乱をきたしておりますので、ご教示のほど宜しくお願いします。


Re: 商標の中用権 - 管理人
2017/10/25 (Wed) 12:18:52
私は商60条は後用権の規定であるという理解でよいと思います。
中用権は権利者の実施(使用)によって生じる権利であり、後用権は善意の非権利者の実施(使用)によって生じる権利であると考えると、商60条を中用権の規定として理解するのは不自然かと思います。


Re: 商標の中用権 - 初心の者
2017/10/31 (Tue) 18:06:28
いつもご回答有難うございます。
その後、「平尾・商標法」を(部分的に、つまみ食い的にですが)調べていましたら、次のような記述がありました。
(引用開始===>)<再審中用権は、他人の商標権の不存在を信頼して、自らは商標登録を得ないで相当程度の信用を形成した者を保護する制度である点において、むしろ先使用権に近い性格であり、・・・・・したがって、60条を33条と同じ「中用権」と呼ぶのは適当ではないと思いますが、従来の用法にならっておきます。> (<===引用おわり)
管理者様の主張されている内容と一致している、と理解しました。


【関連記事】
「後用権について」

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