重大ニュース-サトウの切り餅が特許権侵害に・・・? (2011.09.08)

サトウの切り餅が特許権侵害に・・・?
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特許権訴訟:「サトウの切り餅」の侵害認める 知財高裁(毎日jp)
「サトウの切り餅」は特許侵害 知財高裁、一転認める(asahi.com)

平成21年(ワ)第7718号特許権侵害差止等請求事件 地裁判決
平成22年(行ケ)第10225号審決取消請求事件 特許維持審決取消訴訟
平成23年(ネ)第10002号特許権侵害差止等請求控訴事件 中間判決(裁判所HP)


見た目が良い焼き上がりを目的として側周表面に「切り込み」を入れた切り餅の特許権に関して、越後製菓(原告)が、同業の佐藤食品工業(被告)に製造・販売差し止めや約15億円の損害賠償を求めた訴訟において、知財高裁は佐藤食品による特許権侵害を認める中間判決を出したそうです。

正直、衝撃でした。
どうにも理解できない・・・。

まず、原告の特許発明は、
「焼き網に載置して焼き上げて食する切餅の載置底面又は平坦上面ではなく側周表面に、周方向に一周連続させた一以上の切り込み部又は溝部を設けた餅。」
というもの(概略)。
これにより、
「焼き上げるに際して切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制する」
という効果が生じる。

対して被告の製品は、
「載置底面又は平坦上面に十字の切り込み、及び側周表面に周方向に一周連続させた切り込みを設けた餅。」
である。
そのため被告は、
「載置底面又は平坦上面に十字の切り込み」を設けた場合は、特許発明の上記効果を奏しないため、特許発明は「載置底面又は平坦上面に十字の切り込み」を設けた構成を除外した餅である(つまり、側周表面に「のみ」切り込みを設けた餅である)という旨の主張をしています。

この点、特許発明の審査経過を見ると、原告は、側周表面『のみ』に切り込み部又は溝部を設けた構成に補正しようとしていたりします(ただし、新規事項追加で補正却下)。
また、
・切餅の平坦上面に十字状の交差切り込みを入れたのでは、突発的な噴き出しは抑制できても、刃傷のように焼き開いて盛り上がるため見た目が悪い。
・(本発明は)切り込みを天火が直に当たりづらい側周表面にのみ設けることにより、最中サンドのように焼き上がり、きれいにして均一な焼き上がりを実現できた。
等と述べています。
平成17年8月1日付け意見書)←TIFFイメージ用プラグインがないと読めません。

また、本件に関連する分割出願においては、
・切り込みを単なる餅の平坦上面にX状や+状に交差形成したりするのとは異なり、周方向に形成、即ち、立直側面に周方向に沿って形成するため、焼いた時の膨化による噴き出しが抑制されると共に、焼き上がった後の焼き餅の美感も損なわない。
とも述べています。
平成22年5月14日付け意見書)←TIFFイメージ用プラグインがないと読めません。

さらにいえば、特許発明に係る明細書には、切り込みがあれば突発噴き出しを抑制することはできるが焼き上がった後に切り込み部位が人肌での傷跡のようになること、が従来の問題点であると記載されています。

以上を踏まえて特許発明についてまとめると、
1.特許発明の作用効果は、①加熱時の突発的な膨化による噴き出しの抑制、②切り込み部位の忌避すべき焼き上がり防止(美感の維持)、の2つと考えられる。
2.①の効果は、従来から餅に切り込みを入れることによって解決できることが知られていたので、特許発明特有の作用効果は、②のみである。
3.効果②を奏するために必要な構成は、側周表面『のみ』に切り込み部又は溝部を設けた構成である。

・・・というように理解すると、どうにも中間判決の結論は理解できない。
そもそも、出願人自らが「好ましくない」と自認している「載置底面又は平坦上面の十字の切り込み」が、一見すると特許請求の範囲から除外されている(少なくともそのように読むことができる)。
このような場合は、出願人が意図的に特許請求の範囲を制限したと解釈すべきでなかろうか?

また、知財高裁は、載置底面又は平坦上面の切り込み部において若干の膨化変形が生じるとしても、「最中やサンチウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態」という構成に該当すると解している。
しかし、この点も、切り込み部において若干の膨化変形が生じた状態は、当該構成に該当しないと思う(焼き上がりの外観が最中やサンチウイッチとは異なる)。

なお、知財高裁は、切餅の載置底面又は平坦上面に十文字の切り込みが施された発明が、本件特許出願前に公然実施をされた発明又は公然知られていた(販売されていた)と認めた上で、「切餅の側周表面に,周方向に一周連続させて角環状とした若しくは対向二側面に切り込み等を設け,焼き上げるに際して上記切り込み部等の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンチウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成した」ことを特徴とする点で特許発明とは相違すると述べている。

しかし、容易想到性については、単に「上記本件特許出願前に公然実施をされた発明又は公然知られた発明(被告の「こんがりうまカット」)に基づき容易に想到できたともいえない。」と述べるに留まっており、いささか乱暴な認定であるように感じた。
ちなみに、「側周表面に切り込みを設けた餅」の公知文献は存在する(例えば、特開平07-250636号)。
被告がなぜ当該公知文献に言及しなかったのかは疑問だ。

ところで、被告が原告の特許製品をパクッたような意見も見受けられるが、「切り込みを入れた切り餅」を先に特許出願したのは被告の方である。
※ただし上面下面に切り込みを入れたタイプ(特開2004-097063:2002/9/6出願)。
原告の特許4111382(側面一周に切り込みを入れたタイプ)の出願日は2002/10/31である。

【関連記事】
「餅事件の背景」

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tag : サトウの切り餅が特許権侵害に・・・? 特許 訴訟

コメント

「特開平07-250636号」の図3は、「側周表面に切り込みを設けた餅」ではありますが、本件特許のような「小片餅体である切餅」ではないと思います(「小片餅体である切餅」の集合体?)。「こんがりうまカット」に適用するのは無理があるのではないでしょうか?

特開平07-250636号は審査段階で引例としてあがっていますよね?
あと、本件特許と上記公報とは溝の配置に相違があるように思います。本件は全周もしくは対辺に溝を設けるのに対し上記公報は隣接する側面にのみ溝を設ける形となっています。

Re: タイトルなし

> 特開平07-250636号は審査段階で引例としてあがっていますよね?
> あと、本件特許と上記公報とは溝の配置に相違があるように思います。本件は全周もしくは対辺に溝を設けるのに対し上記公報は隣接する側面にのみ溝を設ける形となっています。

コメントありがとうございます。
さて、複数個の餅片に分割可能な餅体(特開平07-250636号。以下引例。)と小片餅体である切餅(こんがりうまカット)とは、いずれも「餅」として技術分野が共通するため、特許発明の審査段階で特開平07-250636号が引例として挙げられたように、両者を組み合わせるのは容易であると考えます。

とすると、引例と特許発明の主な相違点は、①「小さく分割可能とするための切り込み(引例)」であるのか「噴出力を抑制するために切り込み(特許発明)」であるのか、という点と、②「側周表面に設けられ周方向に一周連続させた切り込み若しくは対向二側面に形成した切り込み(特許発明)」であるのか、という点であると思います。

引例には、(図3及び段落0011の記載に基づけば)「側周表面に設けられ周方向に一周連続させた切り込みであって、分断するには至らない長さの切り込み」を菱餅に設ける構成が開示されていると認められます。
また、「こんがりうまカット」の販売によって、「載置底面又は平坦上面に十文字の切り込みを施すことにより、こんがり且つふっくら焼きあがる(噴出力を抑制できる)切り餅」という発明は公知であると認められます。

であれば、この引例と公知発明との組み合わせによって、「噴出力を抑制するために、側周表面に設けられ周方向に一周連続させる切り込み」を、切り餅に設けることは容易に想到しうるように思われます。
・・・が、もちろんこれは私の考えですので、実際に進歩性が争われたとすれば結果は分からないですね。

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