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弁理士試験-補正・取下後の拡大先願の地位 (2010.01.16)

補正・取下後の拡大先願の地位

拡大先願の地位について - 虎党
2010/01/14 (Thu) 08:09:57
初学者です。

第29条の2にある拡大先願についてですが、「願書に添付した最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面」と同一であるときは・・・とあります。

出願したとき、A,Bという2つの発明を記載しているとします。

このとき、
?公開前の補正でAを削除した場合、このAは拡大先願の地位を有するのでしょうか?

?公開前にこの出願自体を取り下げた場合、A、Bの発明は拡大先願の地位を有するのでしょうか?

29の2条の趣旨を考えた場合、これら発明が公開されることによって、後願で同じ内容を公開しても何ら新しい技術を公開したことにならないため、この後願は拒絶されると解釈しているので、上記??は拡大先願の地位を有しないのではと考えました。

ご教示のほど、よろしくお願いします。


拡大先願の地位について、その1 - ペンキ
2010/01/16 (Sat) 09:03:38
虎党さんのご質問にお答えする前に、特許法29条の2(いわゆる先願の範囲の拡大)の規定が導入された昭和45年の特許法等の一部を改正する法律改正(以下、改正法という)の意義について、立法者の石川先生、後藤先生の解説を基に、いわゆる先願の範囲の拡大の意義と出願公開の方法に的を絞って説明いたします。また、皆さんの理解が得られますように、例の如く長文となりますので(笑)、投稿を三分割いたします。ご容赦願います。

1.先願の範囲の拡大の規定(特29条の2)の意義

特許法は、同じ発明について、二以上の出願があった場合、先に出願した者だけが特許されるという先願主義がとられており、このことは改正前、改正後においても変わりません。この場合、出願された発明が同じであるかどうかは、明細書の発明の詳細な説明とか図面の記載も参考にはされますが、特許請求の範囲の記載を中心にして判断されます。しかし、発明の詳細な説明には、特許請求の範囲に記載された構成要件には含まれない技術手段についても、その発明を実施するにあたって密接不可分な関係にある事項であれば、それを記載しているのが普通です。このような、或る出願の明細書の発明の詳細な説明の項に記載されている技術(発明)について、後にそれが公知になる前に、他の者が出願をすれば特許される可能性があります。先願の発明の詳細な説明に記載されているという理由だけでは拒絶になりません。

そうなると、先願が出願公開されていれば、その出願の明細書に記載されている事項は一般に公表されるので、請求範囲に書かれていないからといって、その発明を後に出願した者に特許するというのは、不合理であり、また他人にとられることがないようにするために、周辺を細かく出願する傾向になって、いたずらに出願件数も増えてくるという問題があります。改正法では、このような出願は拒絶されることになりました。つまり先願の範囲の拡大とよばれているものであって、拒絶の理由として新たに加えられたものです。先願の範囲を拡大して、このような後願を拒絶することとしたのは、上述したような考え方に基づくものであるほか、同時に導入された出願審査の請求制度とも関連します。改正前の法律のもとでは、審査は出願日順に行われますが、改正法では出願審査の請求制度の採用により、その請求の順に審査されるのが原則となります。そうなると、改正前の規定のままでは、補正により請求の範囲が変わるとか、出願の取下げ、却下処分などにより先願でなくなるということがあり、先願の審査処理が確定するまで、後願を処理しないで待っているという状態が起こってきますので、請求順に審査することが困難になってきます。そこで、この先願の範囲の拡大により、後の補正または出願公開とか特許査定前の出願の取下げ、却下処分などに関係なく、後願を拒絶することができることとしたものです。すなわち、先願が特許掲載公報の発行または出願公開になった場合、その願書に当初に添付された明細書、特許請求の範囲または図面に掲載された発明については、その特許掲載公報の発行または出願公開前に出されたものであっても、それを請求範囲とする他の出願は拒絶されます。

先願の出願当初に願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載されているような発明が拒絶されるもので、出願後補正により追加されたような事項は含まれません。特許掲載公報の発行または出願公開後に出願の取下げ、却下処分などがあっても、後願はこの規定により拒絶されます。ただ、先願の詳細な説明に記載されている発明が、後願の発明者の発明したものであるときとか、先願と後願とが同一出願人のものであるときには、先願の範囲の拡大の規定では後願が拒絶されないことになっています。

なお、特許掲載公報の発行または出願公開されない出願は、先願の範囲の拡大の規定とは関係がありません。したがって、特許査定または出願公開される前に放棄され、取下げられ、出願却下されまたは、拒絶査定が確定した出願については、いわゆる先願の地位を持つことはありません(特39条)。(→以下、その2につづく)


拡大先願の地位について、その2 - ペンキ
2010/01/16 (Sat) 09:08:57
(→以下、その1よりつづく)

なお、特29条の2の規定と、特39条の規定とは、後願を排除するという機能について見れば、同一事件に重複して適用する場合がありえますが、いずれを用いて後願を拒絶するかは審査官、審判官の裁量にまかされています。しかし、特29条の2の規定が、上述しました特39条を適用するに際して、先願の処分の確定を待つために後願の審査処理の遅延を招くという弊害を是正し、審査の迅速を図る目的で立法された理由により、通常は、特29条の2が適用されます。以下にご質問に関連する点を中心に、質疑応答形式で説明いたします。

Q1.出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、明細書等)に記載されていれば出願公開前に補正により削除された発明であっても特29条の2に規定する「他の特許出願の明細書等に記載された発明」として扱われますか。

A1.そのように取り扱われます。出願後補正により削除されても、その出願の「願書に最初に添付した明細書等に記載された発明」の取扱いは変わりません。補正の効果としては、その補正が却下されない限り、出願当初から補正後の発明について出願されたものと解されます(補正については訂正審判の確定の審決の効果についての特128条のような規定はないが同様に解される)が、ここにいう、「願書に最初に添付した明細書等に記載」されたときは、当初の願書に添付した明細書等の記載を指し、手続補正書に記載されたものを含まない趣旨です。

Q2.後願の出願前に行った補正により明細書等に追加した記載でも、特29条の2の先願の範囲になりませんか。

A2.なりません。特29条の2では、出願当初の願書に添付した明細書等の記載に限っており、たとえ後願の出願前に行った補正であっても、その補正書に記載された発明によって後願が拒絶されることにはなりません。先願の範囲の拡大の規定は、出願審査の請求制度により原則として請求順の審査となり、必ずしも先願順に審査されなくなることも考慮して定められたものです。補正は後の審査により要旨変更であるときは却下され、また出願審査の請求がなされないときは、要旨変更であるかどうかの判断もされません。そこで、請求の範囲の補正が許される最大限の幅(旧特41条、現行特17条の2第3項)である当初の明細書等に限って、いわゆる先願の範囲にしておけば、後願を先に審査処理した後に、先願が補正によって請求の範囲をどう変えても後願の処分に影響を与えることはありません。特39条(先願)の規定だけでは、先願順の審査でないと処分が不安定になり、請求順の審査がやりにくくなるからです。出願当初の明細書等の記載に限り、しかもそれに記載されていればよいということで割切っていますので、後の補正によって追加されたものは入りませんし、削除されたものでも入るということになりますが、この規定は、上述したような趣旨であることが審査処理の関係で一律に規定されています。なお、平成5年の一部改正により、明細書等の補正の基準が要旨変更から、新規事項の追加の禁止に切替えられています。(→その3につづく)


拡大先願の地位について、その3 - ペンキ
2010/01/16 (Sat) 09:14:33
(→その2よりつづく)

2.出願公開の方法

出願の日から、一年6ヶ月を経過すれば出願が公開されます。なお、出願後一年6ヶ月以内にその出願が取下げられ、放棄されまたは、出願却下になった場合とか、あるいは審査が早く進んで一年6ヶ月以内に特許掲載公報が発行されまたは拒絶査定が確定した出願は公開されません。出願から一年6ヶ月経った時点で特許掲載公報が発行されていない係属中の出願だけが公開の対象となります。つまり、一年6ヶ月経って特許掲載公報が発行さないまま特許庁に出願が係属している状態にあれば、審査請求の有無、審査、審判の段階の如何にかかわらず公開されます。一年6ヶ月の直前に取下げられたような出願は、公報印刷作業の関係から、事実上公開公報に掲載されてしまうこともありえますが、この場合は、出願公開されたことにはなりません。
公開特許公報に掲載される事項は、出願人の住所、氏名等、願書に記載されている書誌的事項と明細書、特許請求の範囲及び図面の内容全文であり、優先権主張、出願審査の請求(公開後に審査請求がなされたときは、その後の公報にそのことがのせられます)等の事実も掲載されます。出願人の提出した願書、明細書、特許請求の範囲及び図面をそのまま写真製版して印刷する方法がとられており、明細書等に補正があったものも、手続補正書をそのまま並べて写真製版されています。写真製版による印刷方法を採用した趣旨は、特許出願の多くは、審査が済んでいない場合がほとんどであるので、後の審査によって補正が却下される可能性もあり、それを組み込んで整理すると、かえって出願の内容を正確に伝えることにはならない理由によります。したがって、この公報により出願当初に願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面とその後の補正の全容が見られることとなります。
なお、公開後は明細書などの補正が制限されており、審査請求のとき、拒絶理由通知に対する意見書提出期間および審判請求のときに限られますが、このうち、審査請求のときになされる補正は、公報に掲載されます。その他の時期になされる補正は審査にかかった後のものであることから、特許査定、拒絶査定などの結論が近いので、公報に載せるまでもないと考えられたものです。なお、平成11年の一部改正により、近年の模倣盗用を抑止する観点から、出願人の請求による早期公開制度が導入され制度改善が図られています。

説明が長くなりましたが、上記制度趣旨から、ご質問にお答えいたしますと、

?公開前の補正でAを削除した場合、このAは拡大先願の地位を有するのでしょうか?

上記Q1、Q2で説明しました通り、この発明Aは、いわゆる先願の範囲の拡大の地位を有します。

?公開前にこの出願自体を取り下げた場合、A、Bの発明は拡大先願の地位を有するのでしょうか?

公開前とは、出願の日から一年6ヶ月を経過する前と理解しますが、出願の日から一年6ヶ月を経過する前に出願自体を取下げた場合は、上記にて説明しました通り、いわゆる先願の範囲の拡大の地位を有しません。したがって、発明AおよびBは、いわゆる先願の範囲の拡大の地位を有しません。


以上、投稿が長くなりましたが、皆さんが基本書とされる逐条解説の特29の2の趣旨説明、特64条の趣旨説明では、説明が簡略化され、理解がかならずしも容易ではないと考え、立法者の解説を基に説明いたしました。同条の理解を深められるよう願っております。


Re: 拡大先願の地位について、その3 - 管理人
2010/01/16 (Sat) 22:33:29
ペンキさん

ご回答ありがとうございます。
なお、公開前に出願を取り下げた場合は、原則として公開されませんので、いわゆる拡大先願の地位を有しません。
しかし、例外的に、出願公開の請求がなされた出願は取下等されても公開されるので、公開前に出願を取り下げてもいわゆる拡大先願の地位を有します。

【関連記事】
「翻訳文未提出と拡大先願の地位」
「審査請求と拡大された先願の地位」
「外国語特許出願と拡大先願の地位」

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弁理士試験-審判請求の理由の補正 (2010.01.16)

審判請求の理由の補正

質問 - ヤツデ
2010/01/15 (Fri) 14:17:43
予備校のテキスト中の特131条の2第3項の説明について
「請求の理由が実質的に記載されていないような著しい瑕疵のある審判請求書の提出を抑制」①とありました。

そしてさらに、「著しい瑕疵のある審判請求書を提出しても補正が不能であるので、不適法な審判の請求であって、補正をすることができないものであるとして当該審判の請求は審決却下となる」②と書いてあります。

過去問で
拒絶査定不服審判において、請求人が、審判の請求書に拒絶をすべき旨の査定に対する不服の理由をなんら記載せず、その査定の取消しを求める旨の主張のみをしている場合、審判長は、その請求について補正を命ずることなく、審決をもって審判の請求を却下することができる

→× 審判長は、審判請求書が審判請求の方式(131条)に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない

とあります。 ①と②の記載から考えて、この問題の場合は
135条の規定に適合するんではないか思ったのですが、解答は違います。どういう理解が正しいのでしょうか?

よろしくお願いします。


Re: 質問 - 管理人
2010/01/15 (Fri) 23:31:47
まず、特131の2第1項ただし書をご覧ください。
そこには、特許無効審判以外の審判の請求の理由の補正については、要旨変更が認められる旨が記載されています。
つまり、拒絶査定不服審判の請求の理由については、記載していなかった請求の理由を追加する補正が可能なのです。
よって、特133条の補正命令の対象となります。


Re: 質問 - ペンキ
2010/01/16 (Sat) 12:43:16
特133条によるか、特135条によるかについて、東京高裁は、「特133条2項の規定と、第135条の規定との関係を検討してみると、審判の請求要件のうち、方式性として、その存否につき、定型的、形式的な審理で足りるものを前者によって、審判長の決定に委ね、その他の請求要件として、その存否につき、個別的、実質的な審理を要するものを後者により、より慎重な合議体に委ね、要件欠けつの場合の処理を図ったものと解するべき」(昭和58年5月31日、判決)と判断しています。
なお、特許庁の運用として、具体的な133条の補正命令や、135条に規定する審決却下の例は、特許庁の審判便覧(特に、21-03.1、21-03.2、21-09、45-19、61-04)をご参照いただければと思います。

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/sinpan-binran_mokuji.htm

最後に、その問題は、以前にも説明しましたが、審決は、審判事件を解決するために合議体としての審判官が行う最終的な公的判断表示です。したがって、審判長が単独で決定を行うことはできますが、審決をすることはありません。このことからも問題文の表現が適切ではありませんので、誤りとなります。

【関連記事】
「訂正請求の要件違反」

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弁理士試験-青本第18版 (2010.01.16)

青本第18版

青本について - こけし
2010/01/15 (Fri) 14:15:07
こんにちは。お世話になっております。

青本18版が発行されたとの記事をブログで読みました。
17版を去年購入済みなのですが、新しく買い換える必要はあるでしょうか?


Re: 青本について - 管理人
2010/01/15 (Fri) 23:30:25
17版は平成20年改正が反映されていませんので、買い替えをお勧めします。

【関連記事】
「工業所有権法逐条解説(青本)第18版の発行予定」

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