米国出願で102条(新規性)、103条(進歩性)の拒絶対応の覚書 (2016.04.13)

米国出願で102条(新規性)、103条(進歩性)の拒絶対応の覚書

いまさらだけれど、忘れたときのための覚書。

さて、米国特許出願の新規性・進歩性(非自明性)に対する拒絶理由が、日本実務と乖離する(分野違い又は機能違い等の変な引例で拒絶される)主な原因として、以下のものが考えられる(誤訳もあるけれどそれは無視)。
なお、機能的文言に関しては、ミーンズプラスファンクションクレームと認定されて(MPEP§2181)、同時に112条(不明確であるとか、必須構成要素が不足してるとか)で拒絶されることもあるけれど、それは割愛する。
※参考.日米間の新規性を中心とした内外乖離に関する調査研究報告書(特許庁)

①米国では本願発明が日本よりも広く認定される
米国では、本願発明を「最も広く合理的な解釈」(broadest reasonable interpretation)に基づいて認定する(MPEP§2111)。また、機能的文言(adapted to」、「adapted for」、「wherein節」、「whereby節」等)を構成要素の一部として含む場合、当該機能的文言はクレームを限定しないと判断できる(MPEP§2111.04)。そのため、米国審査官は、本願発明の構成を出願人の予測を超えてはるかに広く解釈することがある。

例えば、クレームの「収納物が離脱されないような突起」という表現は、日本の審査では離脱されないような機能を有する構造を有する「突起」であると解釈される。しかし、米国の審査では機能的文言「収納物が離脱されないような」
が無視される結果、あらゆる「突起」であると解釈される。
また、クレームの「電流値を算出するように構成された(configured to)算出ユニット」という表現は、日本の審査では電流値算出機能を有する「算出ユニット」であると解釈される。しかし、米国の審査では機能的文言「収納物が離脱されないような」が無視される結果、あらゆる「算出ユニット」であると解釈される。
この結果、米国では本願発明の分野を離れた想定外の引例によって新規性・進歩性が否定され得る。

②米国では引用発明が日本よりも広く認定される
米国では、クレームを拒絶する際に、先行技術の明示的、黙示的(implicit)、本来的(inherent)な開示に依拠することができる(MPEP§2112)。そのため、米国審査官は、引用発明の構成を出願人の予測を超えてはるかに広く解釈することがある。

例えば、引用発明の「算出ユニット」という表現は、当該引用発明の明細書等に「電流値を算出する」構成が明示されていなかった場合、日本の審査では電流値算出機能を有さない「算出ユニット」であると解釈される。しかし、米国の審査では引用発明の「算出ユニット」が本来的に電流値を算出できれば(capable of)、示唆が無くとも「電流値を算出するように構成された(configured to)算出ユニット」の新規性を否定する文献として引用できる。

これらに対しては、以下の対応が提案できる
a)機能的文言を削除補正する。
b)引用文献には記載されていない具体的且つ物理的な構成に限定補正する。
c)当該機能を生じさせる構造的且つ物理的な構成を追加補正する。
なお、d)として、第9版の特許審査便覧2111.04(In re Giannelli判決)の記載に基づいて、『本願発明の「configured to」節は、明細書内の記載により「capable of」よりも狭い意味を持つことが明らかである。よって、「configured to」節はクレームを限定している』と反論したことがあるが、審査官にはまるっと無視された。
ただし、相手によっては有効かもしれないので、インタビューなどで試してみる価値はあると思う。


【特許審査便覧(第9版)2111.04の仮訳】
MPEP§2111.04 「Adapted to( ~ に適している) 」、「Adapted for( ~ に適している) 」、「Wherein(そこで)」及び「Whereby(それによって)」節

「クレームの範囲は、示唆する又は省略可能にするが工程が実施される必要はないクレームの文言によって、若しくは特定の構造についてクレームを制限しないクレームの文言によって、制限されない。しかし、次に掲げるクレームの文言は、網羅的ではないが、クレームに用いる文言の制限効果に疑問を起こさせる文言である。
(A) 「adapted to(~に適している)」又は「adapted for(~に適している)節
(B) 「wherein(そこで)」節、及び
(C) 「whereby(それによって)」節
 これらの節のそれぞれがクレームにおいて限定となるかどうかの判定は、当該事案の具体的事実に依存する。[例えば、次も参照のこと。Griffin v. Bertina, 283 F.3d 1029, 1034, 62 USPQ2d 1431 (Fed. Cir. 2002)(「wherein(そこで)」節は、その節が「操作のステップに意味及び目的」を示す場合には、プロセスクレームを限定している、と認定している)。In re Giannelli, 739 F.3d 1375, 1378, 109 USPQ2d 1333, 1336 (Fed. Cir. 2014)において、裁判所は、「adapted to (~に適している)」節は、「明細書内の記載により『adapted to』が狭い意味を持つことが明らかである。(つまり、クレームされている機械がローイングマシンとして使用されるように設計又は構築されており、それによってハンドルに引張力がかかっていることを明確にしている。」」場合には、機械クレームを限定していると認定した。]24 Hoffer v. Microsoft Corp., 405 F.3d 1326, 1329, 74 USPQ2d 1481, 1483(Fed. Cir. 2005)において、裁判所は、「『whereby』節が特許性に関係のあるものの状況を述べている場合、当該発明の実体が変化するために無視することができない。同文献。しかし、同裁判所は(引用はMinton v. Nat’l Ass fn of Securities Dealers, Inc., 336 F.3d1373, 1381, 67 USPQ2d 1614, 1620 (Fed. Cir. 2003))、「『方法クレームのwhereby 節は、最終的に記載されたプロセス工程の意図された結果を単に表している場合は重視されない』」同文献。」
(「日米間の新規性を中心とした内外乖離に関する調査研究報告書」より抜粋して引用)


【関連記事】
「職務発明の報奨金の税務上の取扱いを確認しました」

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職務発明の報奨金の税務上の取扱いを確認しました (2016.03.01)

職務発明の報奨金の税務上の取扱いを確認しました

従前、つまり、旧法の下では職務発明等の報奨金(発明の対価)は、
出願時に支払う分は、特許を受ける権利を承継する際に一時に支払を受けるものであるため譲渡所得として取り扱われ、
登録時及び実績報奨として支払う分は、権利の移転によって一時に実現したものでないため給与所得に該当せず、使用料と同様の性格を有していること等から、雑所得として取り扱われていました。
そのため、報奨金については、会社等の使用者が源泉徴収する必要がありませんでした。
参考:職務発明等に係る報奨金の所得税の取扱いについて(照会)

これが、今後、つまり新法の原始使用者等帰属の下では、
従業者から使用者への譲渡という概念がなくなります。
そのため、税務上、職務発明等の報奨金(相当の利益)が、給与所得として取り扱われるのではないか?
という疑問が生じます。

そこで、この点を国税局税務相談室に質問してみました。
・・・しばらく電話口で保留された後、
『原始使用者等帰属の話でよろしかったでしょうか?』
という切り出しから、「雑所得になります」との結論を頂きました。
つまり、出願時報奨、登録時報奨、実績報奨のいずれもが、
原始使用者等帰属の下では『雑所得』になるようです。

恐らくは、使用料と同様の性格を有していることから、雑所得として取り扱うのだと思いますが、
今後も税務処理を変える必要がないので一安心です。
ただし、昇給として対価を支払った場合等、個別具体的な事例では異なる可能性がありますので、
その点にはご注意ください。

【関連記事】
「H16年改正後の職務発明訴訟の事例2」


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プロダクトバイプロセスクレームの拒絶理由通知対応 (2015.12.04)

プロダクトバイプロセスクレームの拒絶理由通知対応

「プロダクト・バイ・プロセス・クレームの「不可能・非実際的事情」の主張・立証の参考例」(特許庁)


プロダクト・バイ・プロセス・クレームに対する、「不可能・非実際的事情」の主張・立証の参考例が公表されました。
簡単にまとめると、
①発明の構造又は特性を製法以外で特定することができず、且つ係る構造又は特性を測定に基づき解析し特定することが不可能又は非実際的であること、または、
②製造される物の構造又は特性の具体的態様が多様に変化し、且つそれらの具体的態様を包括的に表現することができないこと、
③生成物が天然物由来のものであり、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であること、
④生成物が複雑で多種多様な構造を有し、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であること、
等を主張すれば、認められるようです(ただし、審査官が合理的な疑問を提示できる場合を除く)。

今後は、「不可能・非実際的事情」を意見書で主張すると共に、保険として製法クレームを追加するという対応が主流になりそうですね。

なお、具体的には、以下のような主張が例示されています。
・表面から○○μm以上の内部にのみ香気成分が存在する、といった文言により特定することは、活性炭の各々によってその構造やそれに伴う特性が異なることにも照らせば、不可能です。
・上記の特徴を有する香気発生源の構造又は特性を、測定に基づき解析することにより特定することも、本願出願時における解析技術からして、不可能であったといえます。
・薄膜の結晶の不均一性に照らすと、その違いに係る構造又は特性を文言により一概に特定することは不可能です。
・結晶性の差については、X線回折(XRD)を用いて測定することが原理的には可能かもしれませんが・・・、膨大
な時間とコストがかかるものです。
・分散状態の微視的な違いは、組成、粘度といった通常用いられる指標によっては区別することができません。
・微視的な分散状態が異なれば、気泡安定性の値も、当然に変化するため・・・現実的ではない回数の実験等を行うことを要するものであって、著しく過大な経済的支出を伴うものであります。
・、「嫌みのない自然な香り」というのは、人間の主観に依拠する指標であるため、定量的に数値範囲等で表記することはできません。
・香味向上剤を構成する極めて多数の微量成分のうち、どの範囲の化学物質が本願発明の優れた香味付加作用に寄与するのかについて分析、特定することは、分析対象の微量成分に含まれる化学物質の種類があまりにも膨大であり、かつ、検出限界未満の微量成分について分析することができないため、不可能です。
・得られる重合組成物の構造が複雑になりすぎて一般式(構造)で表すことは到底できないのが現状であり、このことは当業者の技術常識です。

ところで、「不可能・非実際的事情」の審査は、やっぱりざるでしたね。
まぁ、今回の公表で今後のサーチが不要になるのは助かります。

【関連記事】
「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査運用について」


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